読書日録
昼休みにマンゾーニ「いいなづけ」下巻を読み始める。今週中に読了したいところ。

帰りの電車では「廃墟大全」を読む。小谷真理「瞼の裏の宮殿」、滝本誠「建築の「廃墟」、人体の「廃墟」」、飯沢耕太郎「死せる視線―写真の廃墟解剖学」を読了。いずれも小論ながら刺激的で、読んでいる途中にあれこれと連想が働く。廃墟とは「物語」の0地点なのだろうか。だから石川淳は長編「狂風記」冒頭に廃品の山の光景を描いたのだろうか、そして最終部においてそこに主人公達が回帰していくのも同じ理由だろうかなどと考えながら帰宅。

ちなみに「狂風記」の冒頭部は以下の通り。

なんといふ木か、途方もなく大きい木が一本、もろに横だふしに、地ひびき打つて……その木はだいぶまへから日でりにも風雨にもそこに野ざらしになつてゐるやうだから、たつたいま落ちかかつたわけではないが、それでもくろぐろとした幹はうなりを発するまでにすさまじく、あふむけにのけぞつて、大枝も小枝もなく、葉の一つすらなく、手足をぶつたぎられた巨人の胴体が泥まみれに、ほとんど血まみれに、投げ出されたといふけはひであつた。胴体のなかばは腐蝕した物質の中にうづもれてゐる。根はまだ残つてゐるのか、すでに伐りとられたのか、かくれてゐて見えない。といふのは、ここは平地ではないからである。下からは見あげるほど、いちめんにがらくたの堆積。紙屑、野菜屑、あきびん、あきかん、つぶれたダンボール、さびついた自転車、ぶつこはれの冷蔵庫、ぽんこつのカー、狐の死骸、犬の死骸、もしかすると行きだふれの人間の死骸まで下積になつてゐても不思議でなく、その他ごたごた、やけにぶちまけたのが高く盛りあがつて、それは廃品の山であつた。そのでこぼこの山なみの、うつちやつておけば、ぷつぷつ煙を吐き、やがて火も吹き出しさうなてつぺんに、ずつしりわだかまつた大木のすがたは、おのづとにらみがきいて、この山の主といふいきほひの、殺されてもくたばらぬ貫禄に見えた。


未分類 | 23:17:09 | Trackback(0) | Comments(2)
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