読書日録
昨日はムーンライダーズのコンサート。出勤時から気持ちははやり、新しい本は落ち着いて読めそうにないので、松浦寿輝「散歩のあいまにこんなことを考えていた」を再読する。松浦にしては比較的軽い調子で書かれたエッセイを集めたこの本は、彼らしい世界の細部への繊細な感受性とある種のおおらかさが同居していて、或る程度の読み応えを確保しつつリラックスさせてくれる、私にとってありがたい一冊なのである。

例えばクリップやマッチといった「小さなもの」に対する愛着を綴った文章や、「冬」という漢字の下部にある「、、」が好きだと表明し、点をうつことは「或る力を紙の表層に伝え、また同時に、その反動を自分のペン先に受け取り直すという、微かな、しかし確実なコミュニケーションの手応えの原型がそこにはあるのである。」と続ける一節には詩人らしい繊細さがうかがえる。

その一方で、世の中はきっちりしすぎてるんじゃないか「新幹線にしたって、あんなに速いものが十五分に一本ずつ行き交っていて事故がないなんてことの方がよっぽど異様である。たぶん恐ろしく生真面目で責任感の強い人たちが「きっちり」やっているからこそあんな奇跡的な芸当が日常化しているんだと思うけれど、もうあんなことはやめてしまったらどうなんだ」なんて皮肉交じりのユーモアに満ちた文章も同居しているのがこの本の魅力なのだ。
もっともその中にあって愛猫の死を歎く一連の文章は他のエッセイとは位相を異にした位置にあり、読み返すたびに胸を打たれずにいられないのだけど、今回はそこはあえて読み飛ばした。

松浦はことあるごとにケネス・グレアムが書いた児童文学「たのしい川辺」(ピンク・フロイド「夜明けの口笛吹き」のタイトルはここから引用されたもの)への愛着を語っており、この本の中にも何度か出てくるのだけど、現在松浦が読売新聞に連載しているネズミの冒険譚「川の光」はおそらく「たのしい川辺」へのオマージュだと思う(連載には時々しか目を通してないのではっきりとは言えないが)。単行本になるのが待ち遠しい。

未分類 | 08:00:39 | Trackback(0) | Comments(1)
コメント
猫用品・猫
猫用品・猫を探すなら http://www.mnpainctr.com/101213/507524/
2008-11-12 水 05:49:15 | URL | [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する